国内外の激動でさまざまな情報が錯綜し、それを報じたり読み解いたりひびお忙しい中、県民の皆様も、メディアの皆様も、私のこのような拙文にお目通しいただき、またお耳を貸していただけてありがたいことです。
 まず申し上げたいのは、兵庫県を愛することでは私は人後に落ちず、また識ることについても自信があるということです。
 尼崎市に生まれ、地元の小学校に通いました。父は立花駅近くで開業医をしており、先年亡くなりましたが、半世紀に渡って地域の人々に愛されました。いまは弟が跡を継いでいます。
 中学、高校と神戸は東灘区の学校に通いました。まだ国鉄だった電車で、住吉駅まで乗ったものです。武庫川を渡り、六甲山を眺め、芦屋の美しい家々の間を走りながら、なんといいふるさとを持ったものだと、子ども心にも感じました。阪神間だけではなく、両親は車を駆って、兵庫県中を巡ってくれました。小学校の中学年のころに、郷土の歴史や文化について学ぶのです。それを実地に見せてやろうということでした。おかげで私は幼くしてとんでもなく兵庫通になりました。
 中学生や高校生になると、今度は自分でリュックを背負って徒歩で県内を歩きました。鈍行でどこかの駅まで行き、ユースホステルや駅に泊まる質素な旅です。
 大学から東京に出てしまいましたが、結局はひとは生まれた地に帰って来る。中年を過ぎるあたりで、兵庫県が懐かしくてたまらず、戻ってきて立花に家を借りました。サンテレビで『カツヤマサヒコSHOW』という番組を3年半ほどやったり。これはほぼ1時間に渡ってゲストと私が喋るという、まことに硬派な番組でしたが、私は全国からその人たちが兵庫県に来てくれるのが嬉しかったのです。170人を超えるこの国を代表するようなさまざまな才能を持つ人々を呼ぶことができたのは私の誇りです。

 かかる「兵庫愛」ひとつの集大成として、私はこの手で郷土に対してできることをしてみたいと考えました。
 キーワードは「明るく楽しい兵庫県」です。とかく行政や政治というものは、眉間に皺を寄せて考えがちです。それはそれでいいのです。どんどん論議をすればいい。論議によって思いも寄らぬ解決方法が生まれたりします。ただし、結論が出たらみんな笑顔で。せっかく素敵な郷土に住んでいるのです。明るく楽しい日々を送ろうじゃないですか。人を笑わせることなら人後に落ちないつもりの私もお役に立てるかと。
 今からの4年の間には、年号が変わることが決まっています。皇室もお代がわりとなります。日本国全体が、新しい世の中の空気に包まれるでしょう。それこそ「明るく楽しい日本国」に。兵庫県も乗り遅れるわけにはいきません。その先には東京五輪があって、世界中からお客さんがやって来る。清新な気持ちで迎えたい。兵庫県にもぜひやって来ていただきたい。
 30年以上、モノ書きをやってきました。その多くは旅や食についてです。日本全国、世界中をこれほど歩いて書き続けた男はそうはいないのではないでしょうか。経験とは比較です。頭で考えることだけではありません。旅を続けるうちに、さまざまなものが見えてきました。日本の各地を比較します。各国とも比べてみます。そのうちに、地域起こしなどで知恵を求められることが多くなってきました。そうした機会は、私をも勉強させてくれます。
 この蓄積をぜひ、兵庫県に生かしたい。もちろん、こんな素晴らしい郷土を作りあげて下さっている現場の職員のみなさんに、まだ素人の私は及ぶものではない。だが、その力を借りながら、明るく楽しく、そして責任を引き受けることならできるつもりです。
 ひとつだけ、もっとも力を入れたいのは何かと尋ねられたならば「教育」とお答えしたい。子どもたちへの投資を惜しんではいけない。郷土の100年の計は教育にあります。建造物はやがて古びて行くが、子どもたちは何代にもわたって、むしろ新しく、素晴らしく、なって行くのです。私自身、兵庫県で受けた教育が誇りであって、すべての基礎はそこにある。それだけでこの歳までなんとかやって来られたと信じている。
 夢は日本中、いや世界中から「兵庫県に留学」しようと子どもや若い人たちがやって来ることです。学ぶだけではなく、この地に、素晴らしい風土に感動してもらい、やがては住んでくれる人も増えるかも知れない。そのことは県の力を強くし、新たな文化を生み出し、ますます魅力的な場所にするに違いありません。
 一方で高齢化が進むことも事実です。お年寄りにどう快適に安全に過ごしてもらうか。これにも私はいろいろな構想を持っています。地方で話をする場合は必ず申し上げると、多くの方がうなずいてくれます。
 コンパクトシティなどの集約化を進めましょう。とはいえ住み慣れた土地から動きたくない方は多いでしょう。ここは科学技術の出番です。たとえば自動運転。今の進化を見ていると、あっという間に普及すると思います。すると、病院とスーパーなどへ、決まった場所へは、車をもたない、あるいは運転を引退したお年寄りでも簡単にいけます。こういう、へえっという引き出しからアイディアを出して来るのが、私は好きなのです。
 まだまだ話はつきませんが、まずは私の兵庫県にかける想いを知っていただきたくて、拙い文章を書きました。

兵庫愛をエンジンに「明るく楽しい兵庫県」を作っていく。それが私の決意です。